猫とうさぎとアリスと女王
 サボの家は大きな大きなお屋敷でした。

西洋の雰囲気が漂う、アンティークなお家。
まるでヨーロッパの片田舎にある家のような感じです。

サボが家の中へ足を踏み入れると、一斉に女中さん達が出迎えました。


「お帰りなさいませ。」


女中さんたちは皆、着物にエプロン。
まるで大正時代のような雰囲気。はたまた鹿鳴館?

すると女中さんの中の一人がサボに声をかけてきました。
一番の年配の女中さんのようです。


「清坊ちゃん・・・。やっとお帰りになられたのですね。
しかもこのような可愛らしいフィアンセまでお連れになって・・・。」


可愛い?このお婆様はなんて嬉しいことを言ってくれるのでしょう!
感激しているとサボがそこで口を挟みました。


「なに夢みたいなこと言ってんだよ、この耄碌ババア。ついにボケてきたか。」

「減らず口は相変わらずですね、坊ちゃん。」


にらみ合うお婆様とサボ・・・。
どうやら二人は悪態をつきあうのが常のようです。


「久しぶりのご帰宅ですから、旦那様にご連絡いたしますか?」

「いや、黙っといてくれ。今日は母さんの墓参りに来ただけだから。」

「ではそちらのお嬢様は?」


お婆様は私を見ました。


「こいつは学校の友達。来たいって言ったから連れてきた。
ツネ、手桶と柄杓。あと線香と蝋燭用意してくれ。」


ツネと呼ばれたお婆様は奥の方へと去っていきました。


「墓はそんな遠く無えから。歩いてけるだろ?」

「ええ。」


サボはツネさんが持ってきた道具を持ち、また家を出て歩き始めました。

振り返ると、ツネさんが寂しそうにサボの背中を見ていました。


なんだかサボの家は全体的に寂しい雰囲気が漂っています。
寂れたような、まるで秋が来たまま去らないような、そんな感じです。

色で言えばブラウン。


こんなに秋風が似合う家は他には無いでしょう。


私はまたサボの背中を追いかけました。
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