猫とうさぎとアリスと女王
 ケンにはそれから何度か世話になった。
どうしても我慢できない時だけ、強いヤツを貰った。

その度にケンは嬉しそうな顔してた。
「また来たか」って喜んだ顔して俺に薬をくれた。



もう何回目になるかわからないけれど、母さんの命日に墓参りをしに行った。
いつもは一人だけど、今回はマコが一緒だった。

大好きだった彼岸花を持って、母さんに会いに行った。

家でアルバムを掘り返して、何度も見た。
大好きな母さん。
今も止まった時間の中で微笑んでる。


この家は、母さんが死んでから時間が止まったみたいだ。

家族もバラバラになっちまった。
俺は親父とろくに話もしないし、ついには家を出た。

姉さんも勘当されてから家にはほとんど帰って来ないし、親父も一切関与してない。


この家は腐っちまったんだ。



母さんの命日から大分時間が経って、ある知らせが俺の耳に届いた。


最悪の知らせをテレビで聞いた。



たまたま街中を歩いてたら、電気屋でいくつものテレビがディスプレイされてた。
全部が全部同じ局の放送を流してる。

どうやら昼のワイドショーの時間らしい。
俺はぼんやりと画面を見ていた。


番組は芸能コーナーへと移り、興奮気味のアナウンサーが驚いた表情で喋り倒す。


「たった今入った情報です!
あの、日本を代表すると言ってもいい人気絶頂のロックバンド“The Sadistic Love”のギタリスト・千葉ケンゴさんの熱愛が発覚しました!

お相手はなんとあのバンド“Chocolat”のヴォーカリスト、ラディ!!!」



頭が、真っ白になった。



画面に映された知らない男と姉貴の写真。





姉さんが、画面いっぱいに映ってた。
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