猫とうさぎとアリスと女王
 その日の夜、私はなかなか眠りにつくことができませんでした。

まさに恋の病。
寝ても覚めてもシーナのことばかり。

カーテンの隙間から外の様子が見えます。

窓ガラスにつく水滴。外はきっと雨でしょう。
段々と雨音が激しくなってきました。

すると突然、電話のベルが鳴りました。
私はスタンドの電気をつけ、受話器を取ります。


「もしもし?」

「夜分遅くにごめん。僕・・・シーナだけど・・・。」


その声を聞いて一気に目が冴え、体温が上がるのがわかりました。
私はすぐに部屋の明かりをつけました。


「何かあったのですか?」

「ちょっと頼みがあって電話をしたのだけれど、いいかな?」


シーナが私に頼みごと・・・。嬉しい・・・。


「シーナの頼みなら何でもお聞きしますわ。」


私が照れながらもそう言えば、受話器の向こうでクスッと笑う声がしました。

心拍数は最高潮。
けれど今はいいのです。だって電話なのだから、この真っ赤な顔を見られなくてすむのですから。


「頼みって言うのはちょっと言いにくいんだけど・・・。
サボをマコの家に泊めてあげて欲しいんだ。」

「・・・と、申しますと?」


私は一瞬頭の中が真っ白になりました。

何故私が彼を?
男性をこの家に泊めなければならないのでしょうか?


「サボの家、電気も水道も止まっちゃったらしくてさ。助けてあげてほしいんだ。
僕の家は厳しくて無理だし、イオの家にも電話したら無理だって言うし。」


確かにイオの家は厳しいお家柄ですから、男性の宿泊などは絶対に受付ないでしょう。


「それでイオに聞いたらマコが一人暮らしだって聞いたからさ。」

「えっ、でも・・・。」

「ごめん、僕急ぎの用事があるから。じゃあ、よろしく。」

「ちょっと、シーナ!」


受話器から聞こえるのは通話終了の機械音だけ。

私、どうやら大変な用事を受けてしまったようです。
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