猫とうさぎとアリスと女王
 北海道は夏の終わりだと言うのに肌寒く、涼しい風が私の髪をさらっていきます。

お母様の農場まではかなり距離があるので、車で移動をすることにしました。
繁華街を抜ければ、そこには広大な大地が広がります。

青々と茂る木々。
豊かに実る作物。
のんびりと欠伸をする動物たち。

お母様がこんなところで生活しているのかと思うと、正直可笑しくなりました。


家でのお母様は私には優しく、母の鏡のような方でした。
けれどお仕事が絡むとすぐに厳格な顔になり、お父様の名に恥じないようにと務めていました。

きっと楽しい生活を送っているのでしょう。
私はふと顔を綻ばせます。



お母様の農場に着き、私は日傘を差して広い農地を歩きました。

すると遠目にお母様らしき姿が見えます。


「お母様!!!」


日傘を片手に大きく手を振れば、私に気付いたのか、こちらに向かって走ってきます。


そのお母様の姿といったら。

もう現地の農家の方と見分けがつかないほどの出で立ち。
デニムのつなぎに汚らしいシャツ。
泥だらけの長靴に、麦藁帽子までかぶって・・・。

あまりにも似合っていたので笑ってしまいました。


そんなお母様は両手をいっぱいに広げて私の元へと走ってきます。



「真琴っ!ずっと待ってたのよ!!!」


お母様はそう言って私をぎゅっと抱きしめました。
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