猫とうさぎとアリスと女王
 過去に住んでいた家とは比べ物にならないほど小さな家に、お母様は住んでいました。

外からは牛や羊の鳴き声が聞こえ、車や人工的な音は一切しません。
こんな生活も強ち悪くは無いのかもしれません。

お母様は熱いお茶を私に出してくれました。


「お茶で我慢してね。お菓子も何も無いもんだから。」

「構いませんわ。」


お母様は私がお茶を飲むのをじっと見つめ、かと思うと微笑みました。


「お母さんね、マコが来るの首を長くして待ってたのよ。」

「私もですわ。お母様にずっと会いたかったです。」


お母様は顔を綻ばせてお茶を口に運びました。


「今日、会うことはお父様には?」

「・・・言ってないけど?」

「怒られますわよ?」


お父様は私とお母様にも決して会うことは許しませんでした。

会うときは必ずお父様の許可をいただき、何時何分に何処で会うかを伝えなければならないのです。
その上、護衛を何人も呼ぶ始末。

それじゃあ、親子水入らずでお話もできません。

けれどお父様の命に逆らうのは怖いので、私は一切連絡すらしなかったのです。
なのにお母様ときたら・・・。


「親が子どもに会って何がいけないのよ。」

「それはご最もですけれど・・・。」


でも・・・。


「それはきっと、お父様も一緒ですわ。」


私がそう言うと、お母様は目を伏せました。
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