猫とうさぎとアリスと女王
 小さくなって猫のように眠ったサボの手元には、薬物が入っていたであろう小さなビニール袋。
どうやらそれを体内に取り込んだまま眠ってしまったようです。


「サボ、起きてください。」


私は跪いてサボの体を揺すりました。

ほんの少しの揺れではサボは目を覚ましません。
私はサボの名前を呼びながら尚も体を揺すりました。

心の中で不安が過ぎった瞬間、サボは目を覚まし、薄めで私を見ました。


「サボ、帰りますわよ。みんな心配していますわ。」


私が呆れたように言えば、サボはくすくすと笑い始めました。
一体何が可笑しいのでしょう?


「笑っている場合ではありませんわよ。ほら、立って下さいまし。」


するとサボはまるで子どものように、私にすがりついてきました。
胸に顔をうずめ、まるで甘えているかのように。

私はため息をつきながらもそのままの状態でいました。

きっとまだドラッグが残っているのでしょう。
もういい加減やめなさいと忠告したというのに・・・。



「母さん・・・。」



サボは小さく呟きました。


私はふとシーナの心配した顔を思い出し、携帯電話を取り出しました。
電話をかける相手は勿論シーナです。


「もしもし!?マコ!?」


シーナは物凄く心配した声で電話に出ました。


「シーナ?あの、サボなら無事に見つかりました。安心してくださいな。」

「ほんと!?よかった・・・・。どこにいたの?」

「埼玉県です。」

「埼玉!?」

「ええ。どうやらドラッグを使用したまま眠ってしまったらしく、今までずっと眠っていたみたいなんです。
すぐに連れて帰りたいところですけれど、病院に連れて行った方がいいかと・・・。
少し痩せているみたいですし。」


シーナがため息をつくのが電話越しでもわかりました。


「そうだね。じゃあ僕とイオもすぐにそっちに行くよ。
イオも凄く心配しててさ。」

「サボ自体は元気そうですし、心配はいらないと思います。
今も眠っているだけですから。では、また病院で。」


そうして私は通話終了のボタンを押しました。
< 206 / 281 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop