猫とうさぎとアリスと女王
　状況が把握できずにいると玄関のベルが鳴りました。

私は急いで部屋を出て、玄関に向かいます。

ドアを開ければ、そこにはびしょ濡れの彼がぽつんと立っていました。


「大して面識も無いのに悪いな。シーナから話は聞いただろ？」

「・・・ええ。」


けれどまさか本気で言っているとは思いませんでした。


「タオルを持ってきますから、中に入っていて下さい。」

「ありがとう。」


彼はそう言って玄関に足を踏み入れました。



　私は男性を家に泊めるのは嫌でした。

男性なんて不潔ですし、何をするのかわかりませんし、怖いですし。

けれど、彼の姿を見て放っておけるほど私は鬼ではありません。
何よりシーナの頼みですから。

それに彼は少々近寄りがたい外見をしていますが、悪い人では無いと思うのです。


「どうぞ。」


私は持ってきたバスタオルを手渡しました。

サボはそれでがしゃがしゃと髪の毛を拭きます。


「きちんと拭いてから中に入ってくださいね。
体が冷えているでしょうからお風呂の準備をしたのですが、どうなさいますか？」

「いいよ。そこまで世話になれねえし。」

「けれど風邪をひきますわよ？お洋服も乾かした方がいいと思いますし。
今さら遠慮などしないでください。」


そう言うとサボは観念したのか、お風呂へと足を運びました。


「乾くまで時間がかかりそうですから、長めに入っていて結構ですよ。」

「おう。」


会って間もない男性をお風呂に入れ、お泊りまで許可して。
私ってなんて優しい女の子なのでしょう。

そんなことを思いながら乾燥機にびしょ濡れの服を放り込みました。
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