猫とうさぎとアリスと女王
 相当な距離を歩いたように思えます。
サボは歩みを止めず、その上歩調がかなり速いのです。

なので私はついていくのが精一杯でした。



やっとサボが立ち止まった時には、私の息はかなり上がっていました。

サボは目の前の建物を見ています。
ふと横を見てみれば、そこには“奏芽総合病院”の文字。

そう、ここはサボの家系が代々運営している大病院です。


「行くぞ。」


サボはまた歩き出しました。


「行くって、一体何処へです?」


「院長室。」


サボは真っ直ぐな瞳でそう言いました。

院長室というとこの病院の院長が居る場所。
つまりサボのお父様、佐兵衛さんがいらっしゃるということです。


「院長室に行ってどうするつもりです?
もしやサボ、お父様を人質に立てこもりなぞするつもりですか!?
一人では心細いという理由で私を連れてきたのでは・・・。」

「馬鹿か!
お前なあ・・・俺がそんなことするように見えるか?」

「ええ。」


そう言うとサボはうな垂れました。

だって今のサボの表情、人殺しでもしかねない顔ですわ。


「いいからお前は黙って付いて来ればいいんだよ。
マコ、お前は証人になるんだからな。」


ショーニン?
承認?
商人?
ショウニン?


私の頭の中に無数のクエスチョンマークが浮かびます。


そしてまたサボは歩みを進めました。
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