猫とうさぎとアリスと女王
 しばらくドアの外で待っていると、サボが出てきました。
思ったよりも早かったので私はつい口を開いてしまいました。


「もう、よろしいのですか?」


私がそう問えば、サボは頬を掻きながらぽつりと言いました。


「おう。」


そうして煙草を取り出し、火をつけました。


「サボ、院内は禁煙ではないのですか?」


サボは煙草の煙を深く吸い込み、それを一気に宙へと吐き出しました。
真っ白な煙は天井へと広がっていきます。

煙草の火を窓の淵で消し、吸殻を外へと放り投げます。

これが未来のお医者様?
お父様が見たら幻滅いたしますわ。


「マコ。」


サボは窓を閉めて私に声をかけました。


「帰ろうぜ。」


柔らかに微笑んだサボは、チェシャ猫なんかではありませんでした。


「ええ。」


それはどこかで見たことがあるような・・・。


「あっ!」

「なんだよ、変な声出しやがって。」

「否、なんでもありませんわ。」


そう、あの笑顔。


誰かに似ていると思ったら、サボのお母様でした。



いつものニヤニヤ笑いとは違う優しい笑顔。



お母様に瓜二つでした。
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