猫とうさぎとアリスと女王
 シーナがアトリエとして使っているこの部屋はとても日当たりがよく、心地良い日差しが窓から差し込んできます。

暖かな陽だまりの中、まるで時が止まってしまったようでした。
この時間がいつまでも続けばいいのに。
私はそんなことをぼんやりと考えていました。


「みんなでさ、どこか出かけたいね。」


ふとシーナが呟きました。
目線は窓の外。
風に吹かれ落ちる木の葉を見つめています。

シーナが今どんな表情で言っているのか、私の位置からは見えません。


「そうですわね。」

「マコはさ、どこに行きたい?」


不意にそう聞かれ私は戸惑いました。
突然どこか行きたい所はあるかと問われても、すぐにはでてきません。

私は・・・。


「皆で楽しめる場所がいいですわね。
遊園地や、ベタな観光地でもよろしいかも知れませんわ。」


私がそう答えれば、シーナは未だ目線を窓の外にやったまま返事をします。


「東京タワーとか?逆に面白そうだね。」


笑いを含んだような声でシーナは言います。





私は、本当のことを言えませんでした。
ひた隠しました。

それを口に出してしまえば、私は壊れてしまいそうだったから。
崩れてなくなってしまいそうだったから。



私の行きたい場所など、今はひとつしかありません。



シーナ。



貴方が行くべき場所。




私は、貴方と共にパリへ行きたいです。
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