猫とうさぎとアリスと女王
 静まり返った部屋の中、耐えかねて声を発したのはシーナでした。


「マコ、黙ってないで何か言っ・・・。」


振り返りながら言った言葉を、シーナは途中で制しました。





なぜなら、私が大粒の涙を流していたから。




スケッチブックの上に無数に落ちる水の粒。
その一つ一つが紙の上に乗り、そして染みこんでいきます。


スケッチブックに描かれていたのは、私でした。

どのページにも私の顔が描かれていました。


笑った顔。
泣いた顔。
微笑む顔。
寂しそうな顔。

全部全部、私で埋められていたのです。


「ごめんね、マコ。僕泣かせるつもりなんかじゃ無かったんだ・・・。」


戸惑いながら私の顔を覗き込むシーナ。

顔を伏せる私の顔を上げ、大きな手で涙を拭ってくれます。
頬に触れた手が温かい。


「泣かないで。」


困ったような表情でシーナは言いました。



私の想いは、もう胸の内に留めることなどできませんでした。



限界などとうに迎えていたのです。





私は今まで我慢してきた言葉を、ついに発してしまいました。










「シーナ・・・。行かないで。」




< 231 / 281 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop