猫とうさぎとアリスと女王
 想いは涙と共に次から次へと溢れ出し、止めることなど出来ませんでした。

まるで洪水のように。
心は想いをせき止めることはできず、決壊してしまったのです。

今まで喉につかえていたものが消えていくのがわかりました。


「シーナ、行かないでください。
私を置いて行かないでください。

独りにしないでください・・・。」


シーナはそんな私を抱きしめてくれました。


「御免なさい・・・。
私、こんなことを言うつもりでは無かったのに・・・。

シーナには気持ちよくフランスへ行って欲しかったのに。
笑顔で見送ろうと決めたのに・・・。

御免なさい・・・。御免なさい・・・。」


私はしゃくり上げながらも必死で自分の想いを伝えました。


シーナはそんな私の頭を優しく撫でてくれました。

まるで全てわかっていたかのように。
私の思っていることを見透かしていたかのように。


「謝らなくていいよ。」


私はその言葉でまた涙を流しました。

腕の中で泣く私に、シーナは優しく囁いてくれます。


「有難う。僕、すごく嬉しいよ。
マコがそうやって引き止めるようなこと言ってくれて。

でも、僕は行かなくちゃいけないんだ。
もう決めたことだし、ずっと願っていたことだから。

全部全部、マコのお陰だよ。

僕を強くしてくれたのも、勇気をくれたのもマコだ。
マコがいなかったら今の僕は無いと思う。
だからマコがくれたものを無駄にしたくないんだ。


有難う、マコ。

本当に有難う。」


シーナの腕の中、シャツを握り締めながら私はその言葉を呑み込みました。
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