猫とうさぎとアリスと女王
ⅩⅩⅥ 誰がチェシャ猫をさらったか?
 「なんだよ。結局泣いたのか。」


サボは煙草を噛み締めながらニヤニヤと笑いました。


「あの時絶対泣き出すと思って見てたのに、お前泣かないんだもん。
つまんねえと思ってたらやっぱ泣いたんだ。」

「サボ、やめなさいよ。まったく・・・。」


悪態をつくサボにイオが注意をします。


今日も私たちは図書室のいつもの場所でお喋り。
シーナは荷造りやら手続きで忙しいらしく、ここ最近は学校を休みがちです。
仕上げたい絵もあるようで手が離せないのだとか。

なので今日はサボとイオとお話をしています。

私はこの前のことを全て話しました。


「スケッチブックの他に、この本も貰ったのです。」


私はそう言って一冊の本を出しました。

シーナが好きな本の中の一つで、私に読むように勧めてくれたのです。
なんでも主人公が私に似ているとか。

本当は本を読むのは苦手でしたけれど、有り難く頂戴して今は少しずつ読み進めています。


「“長い日曜日”?またマイナーな本選ぶよな、あいつ。」


サボはタイトルを見て鼻で笑いました。


「もう、なんでそういう言い方しかできないのよ。
本当サボって子どもみたい。
寂しいなら寂しいって正直に言えばいいのに、そうやって強がったりして。」


「全くですわ。
サボも何か貰ったらどうです?」


「別に寂しくなんか無えよ!
ごちゃごちゃ五月蝿えな・・・お前ら。」


そう言ってサボはそっぽを向いてしまいました。


おそらく一番寂しいのはサボなのでしょう。

きっと私よりもシーナとの別れを悲しんでいるはずです。
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