猫とうさぎとアリスと女王
 不器用で強がりなサボは、決して弱音を吐きませんでした。

それはどんな時でも変わりません。
涙だって決して流したりはしませんし、常に飄々としているように振舞います。

けれど私はそんなサボが好きでした。


格好悪いくせに格好いい振りをする。
それがサボらしい生き方なのだと、私はわかっているから。

きっとイオもシーナもわかっている筈です。


「でも、本当にいいの?」


イオが心配そうに私を見ました。

いつか聞いたような台詞。
けれど私はもう前とは違います。


「ええ。迎えに来ると言ってくれましたから、私は待つだけです。」

「一緒にフランスへ行きたいんじゃないの?」


私は少し沈黙を置きます。


「行きたくないと言ったら嘘になります。
シーナは優しいですから、私が一緒に連れて行って欲しいと願えば頷いてくれると思います。

でも私がフランスへ行っても何かできる訳では無いですから。
それこそ傍に居ることしかできません。

私、お荷物になるのだけは嫌なのです。
折角一緒にいられるのなら、私は何かシーナにしてあげたいですから。」


私がそう言うと、サボがくるりと向きを変えて口を開きました。


「マコってさ、そういうところ男前だよな。」


お・・・男前、ですか・・・。


「もっと可愛い表現をしてくださいな。」


私が不満を漏らせば、イオもサボの言葉に同意します。


「確かに。それはわかるわ。
やっぱり家柄とか、過去の栄光の問題かしらね?」


「昔の話はよしてください・・・。」


イオはくすくすと笑いました。
< 235 / 281 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop