猫とうさぎとアリスと女王
　イオに続いてシーナも病室を出て行きました。

それは私たちに気を使ってくれたのか、それともただの気まぐれか。
真意の程はわかりませんでした。

サボは部屋の中にある小さな椅子に腰をかけます。


「お前には世話ばっかりかけてるな。」


サボは苦笑いをして私を見ました。


「全くですわ。」


私も苦笑してそう答えました。


「どんだけ謝っても謝り切れねえ。でかい借り作っちまった。」


サボは遠くを見ながら独り言のように言いました。


「私、サボにはたくさんのものを貰いましたから。
今回のことは今までしてもらったことの恩返しにすぎません。

だから謝罪の言葉など必要無いですから。」


サボは照れ臭そうにおでこを掻きます。


私は本当に心の底からサボに感謝しています。
意気地なしで臆病だった私に、立ち向かうことを教えてくれたのはサボでした。

だから私はあの時、走ることを知ったのです。

BABYのお洋服がぼろぼろになっても、鉄パイプで頭を殴られようとも、私はサボを救いたかったのですから。
だから私の足は歩みを止めなかったのです。



「俺、もう心配かけたりしねえから。
ちゃんと医者になる為に勉強して、精進するから。

だから今回みたいな事はこれで終わりにする。
もう絶対、お前らを危険な目に合わせたりなんかしねえ。」


サボは真剣な目でそう言いました。


今、お父様がサボを見たら絶対に自分の会社に引き抜くでしょうね。
こんなに仁義に溢れた人間、久しぶりに見ましたもの。


私はサボの言葉を信じ、そっと微笑みました。
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