猫とうさぎとアリスと女王
 シーナに話しておきたいこと、話さなければならないこと、それらを自分の頭の中から見つけ出そうと必死でした。

もう長い間会えないのですから、面と向かって言いたいことを言わなければ・・・。


けれど人間というのはこういう時ほど思考回路がうまく動かないもので。
私はどうでもいいようなことを口にしていました。


「シーナのくれた本、全部読みましたわ。」

「えっ?」

「“長い日曜日”。私、生まれて初めてあんなに長い本を読んだかもしれません。」


シーナが以前スケッチブックと一緒にくれた本。
私はついこの間、それを読み終えていました。


「よかったでしょ?主人公のマチルダ、マコに似てない?」


私は肩をすくめます。
だってマチルダに似ているとは思えませんもの。


「私はあんなに芯の強い人間ではありませんわ。」

「そうかな?僕は似てると思ったけど。」


シーナは私を見てにっこりと笑います。

それがなんだか照れ臭くて、私は俯いてしまいました。


「それで、私決めたのです。」


シーナは不思議そうな表情をしました。


「将来のことを。」


イオやシーナ、そしてサボまでもが自分の進むべき道を見つけたのです。
私はずっと模索していました。

自分のしたいこと。
進みたい道。
歩むべき進路。


「進学先はそのまま今の学校の系列の大学に行こうと思っています。
それで大学で勉強をしながら、小説を書こうと思うんです。

私、あの本を読んで凄く感動しました。
あんな紙切れに文字を書いただけで人の心を動かせる、そんな職業って凄くありませんこと?

私も、そういう人間になりたいと思いました。
文才は無いかもしれませんけれど、文章で人に何かを伝えたいと思うんです。」


私が照れながらもそう言うと、シーナは笑顔で一言。


「いいと思う。マコならきっとできるよ。」


たった一言、そう言って下さいました。
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