猫とうさぎとアリスと女王
 それから少したって、イオとサボが帰ってきました。


「シーナの便は遅れは無いみたい。遅れはアジアの方の便ですって。」


するとシーナは時計を見て時間を確認します。


「もうそろそろかな。」


私たちはゲートの前までシーナを見送ることにしました。
直前まで一緒に居ようと、シーナも私たちの傍にいてくれました。

他の旅客者が横を通り過ぎ、機内へと乗り込んで行きます。


「じゃあ、そろそろ行くね。」


シーナのその言葉を聞いて、やっと別れを実感できた気がします。
少し涙が滲んできました。

けれど私は我慢しました。

笑顔で見送ると決めたのですから。


「連絡してね。何かあったらすぐに行くから。」


イオがシーナにそう言いました。


「有難う、イオ。でもお茶会すっぽかしてまで来て欲しくはないな。」


イオはくすくすと笑いました。


「向こうで恋人でも作ったら承知しないから。
マコを泣かせるようなことがあったら地の果てでも飛んでいくからね。」


イオが凄みをきかせて言うと、シーナは苦笑いをしました。


「サボ、勉強頑張ってね。立派な医者になるの待ってるから。」

「おう。時間があったら帰ってこいよ。
イオもマコも喜ぶだろうし、それに・・・。」


サボは言葉を詰まらせ、下を向きました。


「お前がいねえと、寂しいからよ。」


照れ隠しをしながら言うサボは、とても可愛らしく見えました。
サボらしい別れのしかたです。

シーナはサボを抱きしめました。


「うおっ!何すんだよ、気持ち悪いな!」


「サボ、大好き。」


肩越しにシーナがそう呟いたのが、小さく耳に入ってきました。
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