猫とうさぎとアリスと女王
 温かい日差しの中、叔母さんは僕の好きな銘柄の紅茶を入れてくれた。

絵を描いている間は全然お腹が減らない。
というかお腹が減っていることに気付かないんだと思う。

紅茶の匂いを嗅いで、やっと空腹に気付いた。
僕は新聞を読みながらパンに手を伸ばした。

するとパシッと手の甲を叩かれる。


「痛っ!」

「食べるか読むかどっちかにしなさい!お行儀が悪いわよ。」

「・・・御免なさい。」


叔母さんは僕が謝るとにっこり笑って軽食を出してくれた。

叔母さんは芯の強い人で、マナーとか礼儀作法に少し厳しい。
あとレディファーストのこととか。
女性を邪険に扱うような態度をとると、叔母さんは物凄く怒る。



そういう姿を見ると、あの子を思い出すんだ。

あの子も叔母さんみたいな怒り方をしたっけな・・・。


「ちょっと出かけてくる。」


僕はスケッチブックと画材を持って叔母さんにそう伝えた。


「どこに行くの?」

「手紙を出すついでにテルトル広場まで行こうかと思って。」

「そう。気をつけてね。」


叔母さんは笑顔で僕を見送ってくれた。



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