猫とうさぎとアリスと女王
 出来上がった絵を見せると、お爺さんはにっこりと笑ってくれた。


「すいません・・・勉強不足でこんな絵しか描けなくて。」


「いいや。素晴らしい絵だよ。有難う。」


するとお爺さんはゆっくりと腰を上げた。


「きっとわしが死んだ頃に、かなりの値がつくだろうね。
大事にするよ。未来の大物画家さん。」


振り返ってにっこり笑う老人の背中を見て、僕は立ち上がって叫んでいた。


「お爺さん!!!」


ゆっくりと振り返って僕を見る。


「さっきのスケッチブックに描いてた女の子、あの子、僕を日本で待っていてくれているんです!
芯の強い、でも凄く優しい子で。
名前はマコっていって、小さくていつもフリフリした服を着てて!」


お爺さんはずっと僕を見ていた。


「彼女は・・・僕の大切な恋人です!」


その言葉を聞いて、お爺さんはにっこりと笑った。

そして背を向けて去っていった。





なんだか胸がすうっとした。


帰って、絵を描こう。




こんな気分は久しぶりだから。



あの日見た星を、夕焼けを、川を描こう。






そして愛しいあの子の笑顔を・・・。
< 277 / 281 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop