猫とうさぎとアリスと女王
 今しがたシーナへの想いを諦めようと思っていたのに、本人を目の前にするとそんな気持ちは砕けてしまいます。
私って意志の弱い駄目な子・・・。

シーナは顔立ちが物凄く綺麗で、背が高く、スタイルが良く、けれどそんなことは決して鼻にかけない素敵な人。


「この問題はね、xにこれを代入して解けばいいんだよ。」


シーナは私の前の椅子に座り、数式を指差して言いました。

勉強も出来るようです・・・。

私がずっと黙っているのを見て、シーナは言いました。


「昨日は急にごめんね。本当は僕の家にサボを泊めるべきだったのに。」


罰が悪そうにシーナは俯きます。


「いえ、大丈夫です。どうせ一人暮らしですし、話し相手ができて嬉しかったですわ。」


私がそういうと安心したのか、シーナは柔らかく微笑みました。


「電話番号も家も勝手に調べたりして、怒られないか心配だったんだ。」

「そう言えば気になっていたのですが、私の家と電話番号はイオに伺ったのでしょうが、イオの連絡先は何故わかったのですか?」

「両親が以前イオの流派の茶会に呼ばれたことがあって、それでわかったんだ。」


成る程。それなら納得です。

この学校の生徒は生徒間の関係が無くても、親同士の関係で面識がある場合が多々あります。
シーナとイオも例外ではなかったのでしょう。


「あの、他にも聞きたいことがあるのですが・・・。」

「何?」

「サボのことです。サボの家は裕福なんですよね?」


シーナは笑って頷きました。


「そうだよ。裕福じゃなきゃこんな学校に通えないって。マコ、サボのこと心配してくれたの?」

「ええ、まあ・・・。だってアパートに住んでいるだなんて言うものですから・・・。」

「サボの家は大きな病院をやっているから心配は無いよ。
単に親が嫌いでボロボロの安いアパートに住んでるだけ。生活費も親の援助を受けたくないからずっとアルバイトして稼いでる。
でも授業料は親に払ってもらってるから、その辺は矛盾してるんだけどね。」


私はそれを聞いて驚きました。

水道もガスも止められてしまった理由がやっとわかりました。

サボも色々悩んでいるんですね・・・。
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