猫とうさぎとアリスと女王
 すると突然、私の家の電話が鳴りました。


「もしもし。」


私が受話器を取ってそう言うと、いつもの聞きなれた声がしました。


「御機嫌よう、マコ。そろそろ家を出るけれど大丈夫かしら?」


私の友人の透き通った声。


「私も今、準備ができたところですの。外で待ってますわ。」


さあ、退屈な一日の始まりです。

私は日傘と鞄を持ち、外へと足を踏み出しました。




 私は毎日徒歩で学校まで通います。

家から学校まではそう遠くないので苦にはなりません。

そしていつも一緒に通っているのが、この友人のイオです。

イオは私と違って背が高く、大人っぽくて美人。
ものすごく綺麗なものですから校内でも有名なのです。

密かに男性の間で騒がれているというのに、イオはいつも知らん顔。
下駄箱に手紙が入っていようが、告白をされようが、きっぱりとお断りの返事をします。

本人曰く、『興味が無い』だとか。

せっかく男性から好意を受けているというのに、イオは全く無視。
男性方が可哀相です。


「マコ、今週末にお買い物に行く約束をしていたじゃない?
あれ、駄目になってしまったの。御免なさい。」

「またお茶会ですか?家元の娘も大変ですのね。」


イオは美人なだけでなく茶道の家元の一人娘でもあります。

娘と言えど将来は家元となるため、始終お茶会や会合に呼ばれるのです。


「仕方が無いわ。私が望んだことでもあるのだから。」


イオは笑ってそう答えました。



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