猫とうさぎとアリスと女王
 「毒・・・。」


私は呆然としました。

それは私だけでなく、そこにいた全員が同じような現象に陥りました。
懸高氏はしきりに冷や汗をかいています。


「正確にはシアン化カリウム、つまり青酸カリ。
イオの症状とさっき匂った青酸カリ独特の匂いでわかったことだ。」


辺りが先程以上にざわつきました。

それもその筈。
だって先程イオに毒を盛るチャンスがあったのは、目の前にいた懸高氏だけなのですもの。


「さっきイオに毒を盛ることが出来たのはあんただけなんだよ。
目撃者は何十人といるんだ。言い逃れは出来ねえぜ。」


サボはまたニヤリと笑いました。


「私がそんなことをして何の得になる!それに私は青酸カリなど持っていない!
変な言いがかりをつけるのはやめろ!」


懸高氏は動揺し、声を荒げてそう言いました。

傍から見たら確信を突かれてうろたえているようにしか見えません。


「今しがた調べさせてもらったら、青酸カリの匂いがしたのはイオの茶碗からだけだ。
釜や茶杓、その他のもんからは一切反応ナシ。
まあ警察が調べればすぐにわかる話さ。

あんたがイオに毒を盛る理由は知らねえ。
そればっかりはイオに聞いてみなきゃわからねえな。」


周りでサボの話を聞いていた人々は疑いの目で懸高氏を見ます。

コソコソと口元を隠して何か話す人に、頷きながら“やっぱりあの人が・・・”と話す人々。
いい気味ですこと。


「こんなガキの言う事を信じるのか!私は無実だ!」


「懸高さんって言いましたか。俺のことご存知じゃないとか・・・。」


サボは辺りを見回しました。

そして口を開いてこう言ったのです。
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