猫とうさぎとアリスと女王
 その時、チャイムが鳴り響いた。
これは授業開始のチャイムなのか、終了のチャイムなのか。


「あ、そろそろ行かなくては。」


思いついたように空を見上げて彼女は言った。

長い髪が、風に靡いている。


「貴方、お名前はなんというのです?」


帰り際に彼女が私にそう尋ねる。


「西園寺、西園寺・・・紀要香。」

「サイオンジ、キョウカ?長ったらしい名前ですのね。」


私は涙を拭って彼女を睨む。
別に好きでこんな名前になった訳ではないのに。

普通、名字が三文字なら名前は三文字にしない筈。
姓も名も三文字だから字面がしつこい。


「サイオンジだから・・・イオでいいですね。
決まり。貴方の名前は今日からイオ。」


それが生まれて初めてもらった“あだ名”というものだった。


「じゃあ、貴方の名前は?」


彼女は靡く髪をうっとおしそうに掻き揚げて言った。


「マコ。」



それが初めて出来た親友、マコとの出会いでもあった。
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