猫とうさぎとアリスと女王
 「どういうこと?言ってくれなきゃわからないわ。」

「ったく・・・変なとこ鈍感なんだよな・・・。」


また独り言。

まったくさっきからイジイジして。
言いたいことがあるならはっきり言えばいいじゃない。


「あ。」


私が素っ頓狂な声を上げれば、トラさんは不思議そうに私を見た。

けれど気付いちゃった。


「私、男の人は苦手だけど、トラさんは平気みたい。」


普通の男の人ならこんな風に触ったりできないもの。

するとトラさんはうな垂れてうんざりした様に口を開いた。


「お嬢さん・・・もういいや。何も無いんで全部忘れてください。」

「え!?何よそれ。」

「忘れて下さい。もうお嬢さん鈍感すぎて手に負えません。」


もう、一体何なのよ。今日のトラさん、何だか変だわ。



「じゃあ、そのお詫びも込めて今回のお礼ってことで何かしてあげる。何が欲しい?」

「えっ!?」


トラさん、また真っ赤になってる。
なんだかからかうの楽しいかも。


「俺・・・お嬢さんからなら何貰っても嬉しいですよ。殴られても嬉しいです。」

「冗談やめてよ。本当に何されても嬉しい?」

「嬉しいです。」

「じゃあ・・・。」



私はそう言ってトラさんに顔を近づけた。







そして唇と唇が重なる。




なんだ、キスなんて結構普通なんだ。
そんなことを思った。


唇が離れて私はわざと艶っぽい声色で囁く。



「これ、あげる。」



その瞬間トラさんは椅子から転げ落ちた。

本当、トラさんって面白い人。
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