猫とうさぎとアリスと女王
 イオはデッサンが終わると早々に帰ってしまいました。

なにやら明日に行われる京都の大事な会合にお呼ばれしているのだとか。
なので今日の夕方に出発しないと間に合わないそうです。


「イオはまた会合らしいですね。」

「嫌なの?すごくつまらなそうな顔してるけど。」


シーナは先程のデッサンに手を加えているのか、スケッチブックを片手に私に言います。

イオがいないのはとてもつまらないですし、寂しくもあります。
何せイオは私の唯一の友人。
また今週末も一緒にお買い物ができません。

前のお出かけが駄目になってしまったから、今週末は一緒にカフェに行ったりしようと思っていた矢先にこれです。


「つまらないですし、寂しいです。
今週末は一緒にお出かけしたかったのに・・・。」

「じゃあ僕が一緒に出かけてあげるよ。どこ行きたい?」


・・・今何ておっしゃったのかしら?
目を向ければそこには何食わぬ顔でスケッチブックを見つめるシーナがいます。

今、確かに“一緒に出かける”って言いましたよね?

私が硬直していれば、シーナはクスッと笑って言います。


「僕と出かけるの、嫌?」


私は思いっきり首を振りました。


「まさか!凄く・・・嬉しいです。」


私は照れながらも自分の心境を伝えます。

だってだって、二人でお出かけということはつまり“デート”ということでしょう?
例えシーナがそれをデートだと思わなくても、それに近いものはあります。

どうしましょう。
私嬉しくて舞い上がってしまいそう!
けれどそれと同時に酷く緊張もしてしまいそう・・・。

するとシーナの携帯電話が震えました。


「あれ?誰だろ。」


携帯電話のディスプレイを見て、シーナはため息をつきました。


「サボ、一人で帰るってさ。何か用事があるって。」


シーナの顔は少し呆れたようにも見えました。
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