猫とうさぎとアリスと女王
 サボのことで私は先程のことを思い出しました。

聞いてはいけないのかもしれませんが、私はずっとあのことが気になっていたのです。


「シーナ、サボのことで聞きたいことがあるのですが・・・。」

「何?」


私は一息置いて口を開きます。


「サボは、何かいけない薬でもやっているのでは無いですか?」


笑って“そんな訳無いじゃないか”、そう言ってくれれば私の肩の荷が下ります。
お願いシーナ、どうかそう言ってください。

シーナはうんざりしたような顔で言いました。


「なんだ。サボ、またやってるんだ。」

「また!?以前もやっていたことがあるのですか?」

「っていうかなんで知ってるの?サボが言った・・・訳無いよね。」


シーナは凄く難しそうな顔をしていました。
その表情が事の厄介さを表現しています。


「前に煙草の入った箱を隠したことがあって、まずそれでおかしいと思いました。

それから先程お手洗いに行くと言ったときも変でした。手が小刻みに震えていたから・・・。
あれはニコチンの禁断症状によるものでは無く別の物だと。」


前にサボとあのベランダで一緒になった時、サボは煙草を隠しました。

私を別の人間と勘違いしたのかもしれませんが、あの場所には私たち以外に足を踏み入れない筈。
それに煙草ならば隠す必要などありません。

きっとあの中に煙草と混じってドラッグが入っているのでは無いかと思っていたのです。


そして先程の禁断症状を見て確信しました。

サボは薬物を使用していると。


「前にやってた時はすごく軽い物だったし、僕が必死で止めたからサボも止めたんだ。
なのにまたやり始めたんだ・・・。

サボって馬鹿だからさ。わかってないんだよ、事の重大さが。
自分が苦しみから抜け出せればそれでいいと思ってる。」

「苦しみ、と言うと?」


シーナは躊躇いながらも話してくれました。


サボの痛々しい過去を。

その辛い生き様を。
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