こころの展覧会

すると、稲荷寿司を準備して待っている椿姫の姿があった。そこには、木蓮や皐月の姿もあったのだ。
驚くばかりだった藍だが、「早くしろ」と椿姫に促され、席に座った。

それから藍は、何度も「おいしい」と言いながら、稲荷寿司を食べた。

「ありがとう」と何度も心の中でつぶやきながら。

この気持ちが、この嬉しさが、少しでも椿姫に伝わってくれればいいと思った。



その夜。
縁側でコーヒーを二人で飲む。珍しく話しかけたのは、椿姫の方だった。

「弓道はどうだった?」

「すっごく綺麗でした。やっぱり感動しましたね」

興奮気味に言う藍の姿を見た椿姫は、小さく笑った。

「それはよかったな」

「はい。松詠さん、弓道うまいんですね」

「松は武士だからな」

「武士…ですか?」

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