こころの展覧会

「己の信念・正義・志を貫き通す男だ。あの顔に、仏頂面。愛想もなければ、口数は少ない。だから、誤解されることも多いがな」

「松詠さんは、いい人ですよね」

「当たり前だ。何事も納得するまで努力するし、曲がったことが嫌いだ。松ほど真っ直ぐな男は滅多にいないだろうな。だからだ。松の弓を引く姿はとても美しいんだ」

「そうですね。今日、それを体感できましたよ」

藍は目を閉じ、弓道場での事を瞼の裏に描いた。

あの胸の奥まで響いてきた音と、独特の空気の感触。
鮮烈で衝撃的な感動。
その場にいなければ、感じることのできないモノがあるのだった。
 

< 102 / 203 >

この作品をシェア

pagetop