こころの展覧会
9月も終わる頃。
藍がこの家に来てから、4ヶ月が経とうとしていた。
藍は進路希望に悩んでいた。この家に来る前までは、悩むことなど必要なかった事。何故なら、全て父親が決めてしまうからだった。
しかし、藍は自分で決めようと思い始めていた。
『どんなに時間がかかってもいいから、考えるんだ。自分はどんな人間なのか。自分がこれから何をしたいのか。自分の手で答えを出すんだ』
それは、まだこの家に来たばかりの頃に、椿姫が藍に言った言葉。
今まで考えたことがなかった。
自分自身のことを。
自分を取り巻く世界のことを。
そして思うのは、今までの自分が、何て狭い世界でしか物を考えられなかったのかということ。
小学校の時は、時間にあまり余裕がなかった。学校から帰ってきて、家事をやって。それだけで、精一杯だと思ってた。
父が現れてからは、父が決めたことをそのまま進んできた。それだけがしか世界はないと思ってた。