こころの展覧会

この家に来て、目の前が開けたようだった。目の前には、色んな世界があって、世界はもっと広かった。新しい世界を知った。

藍が答えを見つけようとするとき、椿姫は見守っていた。
自分の手でその答えを見つけられるようにと。いつも。

だから、今は、自分の足で歩きたい。その先にあるものを確かめてみたいと、そう思っているのだった。

自分の中に渦巻く混沌とした感情を、消してくれた。
そんな存在の椿姫に、大きな恩を日に日に感じる藍だった。

ある10月の15時のコーヒータイム。
縁側でコーヒーを飲む椿姫の視線の先には、枝垂れ桜の木。椿姫はよく、この枝垂れ桜の木を眺めている。

「椿姫さんは、桜の木が好きなんですか?」

「“好き”というより、この木は“特別”な木なんだ」

言って、椿姫はカップをソーサーの上に置いた。

「“特別”…ですか?」

藍も、カップをソーサーの上に置いた。

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