こころの展覧会
「お前は何がしたい?何を望んでいる?」

「―――え?」

藍は思わず目を見張った。
そうして見下ろしてくる椿姫の目に、とらえられる。
視線を外せない。
椿姫は声量を落とし、低く告げる。

「お前が何を考えているのかわからんが、私に恩など感じる必要はない。前にも言ったはずだ。私に幸せなど訪れはしない」

それを聞いた藍は、拳を力いっぱいに握り、椿姫を見据えた。

「どうしてですか?」

「人殺しだからだ」

「僕にはあなたが人殺しには見えません」

「証拠でも見せろと言うのか?」

「そういうわけじゃありません。何があったのか知りたいんです」

藍はキッパリと言い切った。椿姫の冷ややかな光を灯した目に負けそうになりながらも。

風に木々がざわめく。
椿姫を見据える目は、強かった。その眼差しが強いからこそ、それが本気だとわかる。
 

< 111 / 203 >

この作品をシェア

pagetop