こころの展覧会
6年前。
駆け落ちして結婚した両親を、交通事故で亡くした椿姫は、父方の祖父に引き取られた。
祖父は椿姫を嫌って、物置部屋へと隠すように扱った。従姉妹や叔母たちからの暴力を受け続け、誰も庇うことはしなかった。
進路先も勝手に決められ、通わされた高校で、一人の青年と出会った。
彼は椿姫よりも2学年上で、明るく、無邪気で、エネルギッシュな人だった。
屋上で絵を書いてる椿姫を見つけ、その絵を気に入り、以来しつこいまでの美術部への勧誘が始まったのだ。
「何回誘われても答えは同じだっ!!」
椿姫は追い払っても、追い払ってもついてくる彼が最初疎ましかった。
「今日はそうかもしれないけどさ、明日には気が変わるかもしれないだろ?」
彼こと、香坂葵(コウサカ アオイ)は笑った。
いつもの無邪気な笑顔。
あまりにも綺麗に笑うからこそ、余計に椿姫は彼が嫌いだった。