こころの展覧会
「おいしいだろ?」

「まずくはない」

「椿姫は何が好きなんだ?」

「……かぼちゃ」

「へぇ~。じゃぁ、明日入れて貰うからさ、また一緒に食べよーなっ」

屈託なく笑い、強引なまでの押しに、椿姫は少しずつ負けていった。



ある日の昼休み。
二人でいつものようにお弁当をわけ合った後、葵はたずねた。

「椿姫は何で美術部に入るのが嫌なんだ?」

「私が嫌なんじゃなくて、そっち側が拒否するんだろ?」

ため息混じりにそう答えた。

椿姫は学校でも浮いていた。従姉妹たちから始まったいじめは、あっという間にクラス中に広まっていて、ただでさえ目立つ椿姫の容貌は、学校中に悪評が流れるのに時間はかからなかった。

椿姫は見に纏っている空気さえ、違和感のある生徒だった。

< 117 / 203 >

この作品をシェア

pagetop