こころの展覧会

お腹の中で育っていく命。
日々が過ぎていくほど、椿姫の不安は大きくなっていった。
葵との連絡がつかないまま、一ヶ月が経とうとしていた。

雪は心臓発作でこの世を去った。
もともと心臓が弱かったのだ。この時は発見が遅れた為、助からなかった。

雪の死後、椿姫の精神状態は悪くなっていった。牡丹からの嫌がらせはエスカレートし、葵とも連絡がつかないまま六月に入っていた。妊娠してから5ヶ月が経とうとしていた。


家に電話がかかってきた。

『葵くんに会いたい?』

その声は、牡丹だった。
牡丹からの電話は1日に多い時で、50回近くも電話がかかってきていた。

『今日は切らないでよね。あなたに最初で最後のチャンスをあげるんだから。あなたの家の近くにお寺があるでしょ?そこで待ってるといいわ』

牡丹が言ったことが嘘なのか、本当なのかは、どうでもよかった。

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