こころの展覧会
「でも」に続く言葉は、あの時出てこなかった。どんな言葉も気休めでしかなかった。どんな言葉もあの人には届かない。
「藍くん…」
身体を揺さぶられ、藍は目を覚ました。
目を開けると、そこには柊の姿があったのだ。心配そうな表情を浮かべて。
「藍くん…もうお昼よ。何かあったの?」
藍は枕元の目覚まし時計を確認する。14時を少し過ぎたところだった。
「何でもないですよ…すいません。仕事サボっちゃいましたね」
まっすぐ視線を絡ませたまま、小さく笑った。その目元には、険しさが残ってしまっている。
だからこせ柊は嘘――ごまかしの匂いに気づいた。
「それが“何でもない”っていう顔なの?椿姫と昨日何があったの?あの子も昨日から仕事部屋にこもっちゃてるし…」
柊は、真剣な眼差しで藍を見た。