こころの展覧会

「昨日…聞いたんです。椿姫さんの過去の話を……それで、出ていくか、この家に居続けたいか考えろと言われました。答える前に、部屋を追い出されちゃいましたけど……」

「そう……ねぇ、藍くん。どう思った?」

「よくわからないんです…それでも、やっぱり僕は、椿姫さんに幸せになってほしいんです」

「そう…」

フッと、柊の口元に微笑が滲む。

「だから僕は、ここに居続けます。椿姫さんが幸せになるためだったら、何でもします。それが僕にできる恩返しだからです」

「いい決意ね。私、信じてるの。あの子の未来を」

「僕も信じます」

藍は笑った。
柊は藍のその笑顔を見て笑った。

「これ、よかったら見るといいわ」

言って、柊は一冊の本を藍に手渡した。

「何ですか?」

「椿姫が出した画集よ」

それだけ言うと、柊は藍の部屋を出ていった。
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