こころの展覧会
藍は黒い表紙をそっと開いた。
そこには闇の世界が描かれ続けていた。
暗い、暗い、闇の中には何もない。光の届かない場所で、たった一人という身を切られるような孤独。
悲しみ。
苦しみ。
辛さ。
痛さ。
正常さはどこにもない。
胸を容赦なく抉る狂気。
真っ暗な闇の淵に取り残された。
その闇には終わりなどなく、漂うしかない。
沈んでは、溺れていく。
咽が焼けるようで、言葉が封じられる。
ひしひしと伝わってくる感情と生々しいほどの悲鳴は、胸に重りをつけ、息苦しくさせる。
背筋が凍る。
全身がさらわれる。
最後の一枚は、黒い羽根の天使だった。腐って堕ちていく羽根を抱いて、何かを睨んでいる。それは狂気の光を放つ瞳。その根底にあるのは孤独。
胸がこんなにも痛くなるのに、それはとても綺麗な絵で、知らず知らず頬を涙が伝っていた。
その絵を、藍は見たことがあった。昔絵画コンクールを見に行ったときに見た絵だった。その時も涙を流したことを、この時、思い出した。