こころの展覧会

藍は涙を拭いた。
決意を胸に立ち上がった。コーヒーを淹れて、椿姫の仕事部屋へと向かった。

障子戸を少しだけ開けると、中の様子が見えた。そこには一心不乱に絵を描く椿姫の姿があった。
その表情は今まで見た表情のどんな表情よりも感情的で、感傷的だった。

―――そんなに悲しそうな顔をしないでください。
そんなに自分を追いつめないでください。
あなたがあなたを一番責めてる気がします。

その時、ポタリと椿姫の手から筆が落ちた。

「椿姫さん」

藍は声をかけて、部屋の入り口で足を止めた。

「なんだ」

椿姫は振り返らない。

「お話があります」

「聞きたくない」

「聞いてくださいっ!!どうしても聞いてほしいんです!!」

語尾が強まる。
椿姫は藍を見た。
強い眼差し。

「……わかった」

椿姫はその場に座った。
藍は向き合うようにして座り、椿姫の前にコーヒーを置いた。

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