こころの展覧会

「飲んでください」

藍は椿姫にコーヒーをすすめ、自身も一口だけ飲むと、カップをソーサーに戻した。

「椿姫さん。僕はやっぱりあなたに幸せになってほしいです」

「…………」

「過去は過去でしかないんです」

「だが、自分がやってしまった罪が消える訳じゃないんだ」

「そうです。消えたりしません。でも、だからって自分の心の闇に負けないでください。罪悪感に負けないでください。これ以上自分を…傷つけないでください…っ」

藍はまっすぐ椿姫を見据えた。

「あの橋の上で僕を助けてくれました。そして、僕に光の手をさしのべてくれました。僕を救ってくれたのは、あなたなんです」


橋の上。
あの時、同じ闇の中にいた。
だから、あの射るような瞳が怖かった。
自分の弱さを責められてる気がした。
でも、一緒に過ごすことは、苦に感じなかった。
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