こころの展覧会

「椿姫さんっ!!幸せから逃げないでください……っ」

藍は必死に訴えた。
椿姫はただそれを見てた。
しばらくの沈黙。
藍は唇を引き結び、椿姫から視線を逸らさなかった。
その時、椿姫の表情が緩んだ。

「……幸せになるのが……怖いんだ」

椿姫の眉間には皺が寄り、目には悲しみの光が宿る。縋るような目が、藍を見た。

「幸せは、椿姫さんにとっていいものではないんですか?」

「幸せには副作用があるだろ?何か悪いことを引き起こす」

「そんなことありませんよ。大丈夫です。もっと信じてください。僕は幸せがいいものだと、心を安らかにしてくれると、そう信じています。だから、これからの未来を捨てないでください」

「お前は強いな……私はそんな風に強くはなれない…」

椿姫は俯いた。
そんな椿姫の頬に、藍はそっと触れた。

「大丈夫です。僕はあなたが幸せになるまで、あなたのそばにいます。ずっといます」

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