こころの展覧会

藍は自分について考えるようになった。そして、自分というものを問い、意識し、明確にしていくことで、それが自信につながっていったのだ。

椿姫が初めて誉めてくれた夕顔の絵を、持ち歩くようになった。自分の原点であるそれを忘れないように。それは、支えとなる。

「そうか。私もお前に救われたさ」

言いながら、椿姫はぱらりと扇を広げる。鼻先より下の表情は完全に隠され、涼しげな目元だけが覗いた。

藍は嬉しくなり、空を見上げた。
青く澄み切った空は高く、とても高いところにある。



   ☆



「椿姫さんっ!!朝ですよっ!!起きてください!!」

藍はいつもの時間に、椿姫を起こす。しかし椿姫はなかなか起きない。

「…あと30分」

「朝食が冷めちゃいます。とっとと起きてください」

藍はさらに揺さぶった。椿姫はなんとか上半身だけを起こした。
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