こころの展覧会
冷え冷えとして、澄み切った夜だった。水晶のように透き通って硬質な寒さの中、コーヒーが身体をあたためてくれた。
「明日行ってくるから」
椿姫は、細く鋭い月を見ながら言った。
「わかりました。じゃぁ、これを持っていってください」
言って、藍はスケッチブックにはさんであった一枚の葉書ほどの大きさの紙を差し出した。
椿姫はその紙に視線を落とした。そこには一輪の花が描かれていた。
「椿姫さんに一番似合うと思った花です」
椿姫はただ無言で、その絵に描かれた花を見た。
描かれた花は白い椿の花。
バラほど華美ではないが、申し分のない魅力と品格のある花。凛としたプライドの高さを感じさせるが、同時に慎み深い奥ゆかしさを感じさせる。
「椿姫さんには白い椿の花がよく似合いますよ。だからお守りです」
藍はまっすぐに椿姫を見て言った。