こころの展覧会
「あおい…」
椿姫は声をかけたが、葵は何の反応も示さない。
その時、視界の隅に葵の左手を見つけた。左手の甲には痛々しい傷跡が、まだ残っていた。
椿姫はその手に自分の右手を重ねた。
「会いに来たぞ」
椿姫は左手で葵の頬に触れ、自分の方に顔を向けさせた。
その瞳は、椿姫を映しているのに、見えていないかのようだった。
「痩せたな……それにこの手の傷……葵の夢、壊したの私だな。人生を狂わせたのも」
椿姫はまっすぐに葵の目を見た。
「なぁ……私が憎くはないか?恨めしくはないか?」
ゆっくり、ゆっくりと椿姫は話しかける。
しかし、葵は何の反応もしなかった。
人形のようになってしまった葵の頬。それでも、ほんのりと体温を感じる。
「あの時、私はあんたが憎かった。恨んでた」