こころの展覧会

「葵、ありがとう。それと…ごめんなさい……」

今は悲しいだけのつながり。
苦しいだけの絆。
まるで呪いのよう。

椿姫の目から涙が流れる。

「私は…葵に幸せになってほしいんだ……許してほしいなんて思わない……けど…償いは、必ずするから…ごめんなさい……」

「……つばき……」

葵の目に、微かに光が宿った。葵の目が椿姫を見る。視線が絡まる。

「葵っ!??」

「…償いなんて……いらないんだ…許しを乞うのは…俺の方だ……ごめん……肝心なときに何もできない俺でごめん…」

その声は掠れていて、所々聞き取るのが難しかった。

「私はここに許しにきたんだ…」

「そうか……よかった、よかった……」

葵は涙を流しながら、何回も繰り返した。

「葵、どうか、幸せになって……私は、葵の幸せを心から祈るから……」

椿姫は穏やかに笑った。
そこに冷たさの欠片は一片もない。
雪は解け始めたのだ。
長い冬は終わったのだ。

< 159 / 203 >

この作品をシェア

pagetop