こころの展覧会

―――葵、先生、私はもう大丈夫みたいだ。もう、過去にしがみつくのはやめたんだ。やっと解放された気がする。今の私には、支えてくれる人や大切にしたい人が、たくさんいるから。歩き始めたい。今日からやっと一歩ずつ前に。




その夜。縁側でのいつものコーヒータイム。

「藍、お前はこれから先どうするんだ?」

言った椿姫は、真剣な眼差しで藍を見た。
長い髪が夜風になびく。艶やかな髪は月光を弾き、いっそう妖しく揺れる。

「ずっと考えてました。あの家にもいつかは戻らないといけないと。学校にも行かないけない……」

「これから先、何がしたいんだ?」

「絵を描き続けたいです」

「それはなぜだ?」

「絵を描くのが好きだからです。そんな単純な答えを、見失っていました。でも、今はっきりと言うことができるんです」
< 164 / 203 >

この作品をシェア

pagetop