こころの展覧会
―――葵、先生、私はもう大丈夫みたいだ。もう、過去にしがみつくのはやめたんだ。やっと解放された気がする。今の私には、支えてくれる人や大切にしたい人が、たくさんいるから。歩き始めたい。今日からやっと一歩ずつ前に。
その夜。縁側でのいつものコーヒータイム。
「藍、お前はこれから先どうするんだ?」
言った椿姫は、真剣な眼差しで藍を見た。
長い髪が夜風になびく。艶やかな髪は月光を弾き、いっそう妖しく揺れる。
「ずっと考えてました。あの家にもいつかは戻らないといけないと。学校にも行かないけない……」
「これから先、何がしたいんだ?」
「絵を描き続けたいです」
「それはなぜだ?」
「絵を描くのが好きだからです。そんな単純な答えを、見失っていました。でも、今はっきりと言うことができるんです」