こころの展覧会
「そうか……いい覚悟ができてるじゃないか」
「でも……」
「何が不安なんだ?」
椿姫は藍の隣に座った。
長い髪が、肩からしどけなく流れ落ちる。
「今からでも間に合うでしょうか?」
「それはお前次第だ」
「スタートをきるのにだいぶ時間がかかってしまいました…」
「やりたいと強く思う気持ちと、覚悟があるなら、遅くはないんだ。ここから始めればいい」
「ここから……」
「大丈夫だ」
椿姫の形のよい唇が動く。告げる。
「……そうですね」
「ここにはいつでも顔を出せばいい」
その口調は優しかった。
「はい」
藍は素直にうなずいた。
次の日。
藍はこの家を出た。
そして、父親に自分の決意を話し、受験勉強に打ち込んだ。
受験が終わるまで、あの家に顔を出すことはしないと決めた。