こころの展覧会

4月。
藍は高校に入学した。そして、美術部に入部をした。母とも家で一緒に暮らすようになり、兄である葵とも会話が増えた。

「藍くん、高校入学おめでとう」

柊が、ホールケーキを藍の目の前に出す。

「よくやったじゃないか」

木蓮は、藍の頭を撫で回した。くしゃくしゃになるまで。

「藍くん、これ入学祝いよ」

皐月はラッピングされた小さな箱を藍に差し出す。

今日は藍の入学と、椿姫が四月下旬に個展を開くのを一緒にお祝いするため、みんな集まったのだ。
居間があっという間に宴会場になる。居間の戸は開け放ってあり、庭が見える。
そこには、夜陰に浮かび上がる桜。流れるような枝に、色の濃い花を多数付ける様子は、上品で、美しい。

木蓮、柊、皐月は酒を派手に飲み始め、松詠は隅の方でゆっくりと飲む。

藍は料理を食べる手を止め、庭に降りた。
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