こころの展覧会
頭を上げた途端、視界が桜色に染まる。色鮮やかな見事な枝振りの枝垂れ桜。
地に着くほどに伸びた枝は、花が咲いていなければ柳と見間違えてしまうかもしれない。
……桜の雨だ。
まるではなが、天から降り注ぐようだった。
藍は、二歩、三歩と枝垂れ桜に近づき、しばし呆然と桜を見上げていた。
「藍」
名を呼ばれて、そちらを見ると、枝垂れ桜の幹にもたれ掛かって座っている椿姫と目が合った。酒を一口、二口と静かに飲んでいる。
「藍」
もう一度名を呼ばれた。
神秘的な印象を与える瞳が、まっすぐに藍を見ている。
強い風が吹いた。