こころの展覧会
ただ桜の枝だけが、二人の間で揺れている。
「私は近いうちに旅に出ようと思う」
「旅にですか?」
「そうだ。旅をしながら絵を描くんだ」
「いいじゃないですか」
「そうだろ?きっと楽しい。不思議だな。私は今、温かい気持ちなんだ。こんなにみんなが笑ってる。自分の幸せを願ってくれてる。この気持ちを“幸せ”と呼ぶのだろうか?」
「そうですよ。椿姫さんが幸せだと、僕も幸せな気持ちになります。それは、ここにいるみんな同じ気持ちなんです」
「そうか…。なぁ、藍。いつか、そう、もっとお前に力量がついたら、私とともに旅に出ないか」
「僕も、ですか?」
「そうだ」
椿姫は頷く。
小さな小さな仕草。
唇には淡い笑み。
「お前となら旅をするのが楽しそうだ。どうだ?」
反応をうかがう眼差し。
「僕はこれからも、力をつけていけるでしょうか?」
藍はじっと眉根を寄せ、低く唸るような声音で問う。