こころの展覧会

「皐月さんは、椿姫さんからの手紙には何が書いてあったんですか?」

そう聞いたのは、片付けが一段落した時のこと。

「もっと自由に生きてくださいって書いてあったわよ」

皐月は手元のアルバムを開きだした。

「自由、に?」

藍は繰り返した。

「そうよ。姫と初めて会ったのは、ちょうど6年前かしらねぇ」

広げたアルバムを、藍に見せる。そこには、まだ幼い椿姫が写っていた。今と顔つきが違う。

「私、姫に一目惚れしたのよ」

「えっ?」

藍は反射的に、皐月の顔を見た。

「ずっと…、あたしの片思いだったけどね」

苦笑混じりに皐月は言った。
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